高尾山と富士山

まんが王のある 八王子とその歴史<コラム>

2011年11月25日八王子駅南口サザンスカイタワー内八王子総合事務所から撮影した富士山と高尾山

八王子は、八王子城・高尾山・千人同心・いちょうの木・松姫最中などが有名です。まんが王は、その東町にあります。
中央線・京王線・横浜線とアクセスも良く、多くの人々が行き交う町でもあります。八王子の歴史をまんが王と共に訪ねてみませんか?

高尾山と富士山

まんが王のある八王子とその歴史
<コラム>

サザンスカイタワーより撮影:2011年

八王子城・高尾山・千人同心・いちょうの木・松姫最中などが有名な八王子。 まんが王は、その東町にあります。八王子の歴史をまんが王と共に訪ねてみませんか?

梅雨の晴れ間を縫って八王子城に登った<後編>

ほとぼりさめやらぬうちに八王子城登城後半に突入する。前回は無事本丸曲輪まで辿り着いた所までだった。今回は下城の行程に入る。

<有意義な下山とは>

 下城というか下山は登ってきた道をひたすら下りることである。登山は頂上を極めて下山することで終わると五木寛之先生もおっしゃる。下山なしには完結しない。登るときはひたすら上を向いて脇目もふらずに行く。下山は辺りの風景も楽しみながら充実して歩けると。さらに続けて言う、日本社会は戦後ひたすら上ばかりを見つめて頂上を目差してきた。高度成長経済はあらゆる矛盾を内包しながらも日本を世界第2位の経済大国に押し上げた。それは山の頂上に行き着いたことだとも言える。21世紀はそろそろ有意義に下山を始める時だとも。「人生下り坂最高」とBSのサイクリング番組で日本全国を走り廻っている火野正平氏も叫んでいた。

 そうだ下り坂は最高なのだ。本丸頂上から八王子神社までとにかく向かう。登りには軽く跨いだ木の根や深くえぐれた土道が容赦なく邪魔をする。ふらふらと神社の裏手まで着く。神社の横の石段のステップがやたら狭い。登るときは感じなかった勾配もきつい。先ほど本丸曲輪で会った人は軽業師のごとく一段飛ばしで跳ねるて下りる。下山をもっと楽しめばいいのにと一段一段を踏みしめて降りる。石段の途中、膝が笑っているのに愕然とする。膝は確かに笑うのだ。がくがくと膝のお皿が締まらない。体重移動もままならない。えらいところに来てしまった。そう言えば数年前、裏高尾を下りた時にも膝が笑っていた。あの時はもっと過酷な山道だったが今回の方がよりきつく足を取る。よく登る時よりも下りの方が辛いという。まさにそうだ。全体重が一歩一歩にかかるからだろうか。なんとか石段はゆっくり下りる。鎮座する八王子神社に2礼2拍手1礼、下山の無事を祈願する。賽銭も払わずに。霊験あらたかというわけにはいかないか。

 五木先生にはすまないがゆったりと風景を眺めながら下りる余裕はない。遠方よりも足許を見つめて山道を下る。7合目、6合目、5合目、表示石柱が横目をかすめる。登るときにも苦しめてくれた悪路は一段と威力を増して襲いかかってくる。「こけつまろびつ」きれいな日本語。感心していたら転けた、まろんだ。赤茶けた土が一張羅にべったりと付く。こうなれば開き直りの心地、矢でも鉄砲でも持って来いだ。しかしここは八王子城。矢も鉄砲も降り注いだに違いない。滅多なことは言えない。戦国武者の怨念も潜んでいるかも知れない。帰りの電車の奇異なものを視るような目など気にするな。命をかけた人々の魂が眠る所だ。

<木漏れ日の観音像>

 明治45年4月吉日と銘記の鳥居まで戻って来た。来た道とは違う方角に社が見える。なだらかな道がジグザクに伸びている。歩みは自然とそちらに向かう。入母屋造りの赤い屋根がひっそりと佇む。柱には福善寺観音堂とある。観音は三十三に変化(へんげ)すると言う。煩悩の多い者どもをその願いに沿って変化しつつ導くとか。煩悩だらけの散策人、千手でも十一面でも足りそうにはない。ここの観音堂ご本尊は何観音さまであろうか。確認しようとするが正面はきっちりと締まっている。おそるおそる階段を登り破れた障子の隙間に眼をあてる。(罰当たりだ)中央に小さな白い聖観音がみえる。辺りには百体ほどの像があるのだが詳細はわからない。おそらく百観音と言うことか。

 この辺はアシダ曲輪と言われている所。少し平らけていて大きな木がまばらに屹立している。木漏れ日も差し、心地が良い。木々の間に草むした道が続く。右手に木柵の階段が見える。十数段をあがると石仏が点在している。いつ頃のものかは定かではないが西国、板東、秩父の観音たちだ。西国三十三観音、板東三十三観音、秩父三十四観音、全てお参りするのが百観音めぐり、江戸時代に流行した。ここはそのエッセンスを披瀝している。密やかで静寂が包む。人も辺りに見あたらない。千手、十一面、如意輪と様々な観音さまを独り占めが出来るのが実に良い。ちょっとお気に入りに登録して置こう。

<瑠璃色の鳥に会えるかも>

 階段を下り元の道に出る。2、3体の石の観音さまが木漏れ日に浮かぶ。草の道を抜け砂利の坂道を下りる。川沿いの道に続く。あちこちに三脚、一眼レフを構えたカメラマンに出会う。バードウォッチングのようだ。八王子城には絶滅危惧のオオタカが営巣していると聞いたことがある。圏央道工事の影響が心配されているとも。八王子城、高尾山を貫いた工事は完成したが自然に対する負荷はどうだったのだろうか。便利さや経済コストと自然保護の両立は決して簡単ではないような気がする。昨年来の原発事故がそれを如実に示しているのではないか・・・・。

 カメラマン氏に尋ねる。「何を写しているのか」と。狙いはなんとサンコウチョウ。サンコウチョウのオスは瑠璃色をし、尾羽の長い綺麗な鳥。本州には夏渡ってくる。八王子城に来ていたとは驚きだ。オオルリも視られると言うからウオッチャーには堪らない。朝早くから夕刻までじっと現れるのを待つらしい。瑠璃色に魅せられ日長一日を過ごすのは好きでないとできない。シャッターチャンスも簡単には来ない。おそらく時にカラ振ることもあるだろう。人のことはいえないが世に言う好事家はあらゆる物を犠牲にしても悔いは残らない。フリークとはそんなものだなどと余計なことを考えながら歩を進める。それにしても鳥は全般にメスよりもオスの方が綺麗なのはどうしてか。人は・・・・。

<曳き橋と御主殿>

 やがて橋を渡る。広場のような空間が拡がる。階段の上が古道を整備した道。御主殿へ続く。昭和50年代に始まった八王子城発掘。天正18年の落城当時の様々なものをタイムスリップさせた。この古道もその一つ。おそらくは大手門跡方向から続いていた。道はやがて切り通しなのか、堀切なのか、その上にかかる巨大な木橋に着く。その向こうに御主殿の石垣が見える。この橋は曳き橋と言われる。あらゆる城で採用された。彦根城正面にもあった。籠城戦はまず敵の侵入を防がなければならない。有事の際曳き橋は切って落される。今は頑丈に出来ている橋だが実際の形は判然としていない。縄張り(図面)も残っていないようだ。戦勝側は堀を埋め、天守を壊し、石垣を埋める。破壊工作するのが戦国の習わし。八王子城のダメージも相当だったのではないか。想像に難くない。

 曳き橋を渡る。正面が虎口(こぐち)。石垣が並ぶ。虎口は城の出入り口ではあるが防御と攻撃の重要な場所。侵入した敵はまっすぐには進めない。曲がらされ、止まらされ、攻めあぐねる。途端に矢弾が降り注ぐ。虎口の構造は枡形が基本だ。野面積みのような石垣が全面を遮る。蹴上がりの大きい石段。復元は往時に近づけたとか。勇壮な構えでもある。

踊り場や石段も踏石が敷き詰められ、穴太衆の技かと見紛うばかりの見事さだ。最上段の冠木門を抜けると突然視野が広がる。ここが御主殿跡だ。今は整備のために囲いがしてある。広大な敷地、かっては北条氏輝の屋敷・御主殿と家臣が集う会堂があった。

<戦国の世とは>

 戦国の山城は概して根小屋地区という生活の場を麓に持っていた。御主殿は日常を過ごす屋敷。普段は君臣ともそちらで暮らす。一旦戦火にまみえると山の本丸曲輪に登る。八王子城は織田信長の安土城をモデルにしていたとの説もあるが未だ完成を見ずに落城した。実に口惜しい気がする。

 御主殿跡からは青磁や染め付けの皿、天目茶碗、風炉などの茶道具、ベネチアングラスなど、お宝鑑定団が喜びそうな品々が多数出てきたらしい。おそらく完品物だったら億単位の値がついたことだろう。北条の権勢が偲ばれる。きっと上杉軍や前田軍が戦利品として略奪していったに違いない。妄想が拡がる。

 御主殿から細道を下りて城山川沿いに出る。もうそこが御主殿の滝。それほど大きくないのが意外だ。当時はもっと水嵩もあり滔々と流れ落ちていたのだろうか。ここは八王子城攻防戦でも一番の悲劇の場所だ。先にも書いたが自刃した女性や老臣たちが次々に飛び込んだ。まるで戦国時代版バンザイクリフ。酷い。戦争はもののふだけではなく無辜の民も容赦なく巻き込む。脇には大きな供養塔が建っている。折り鶴や傾いた卒塔婆がもの悲しい。滝壺も間近に見える。透明できれいな流れは却って憐れを誘う。三日三晩、城山川は朱に染まったといわれる。この清流からは想像だにできないが・・・。今はどうかは知らないが城下の里では長く落城の日に小豆の汁でご飯を炊き「あかまんま」にし供養をしたともいわれている。

<静かな散策にお薦めの道>

 御主殿の滝から城山川の清流沿いをゆっくりと歩む。静かな散策にお薦めの道だ。涼風がほほをなでる。ほぼ1周してスタート地点の案内所に到着する。案内人氏が先日長崎ナンバーのバイクで名城百選スタンプを押しに来た人がいたと話していた。フリーク恐るべし。

<散策の最後は>

 ひとしきり汗もかいた。八王子城を後に朝来た道をバス停に向かう。途中の左手行きがけに眼に入ったガーデンcaffe「うまし郷」の看板に誘われる。締めはやはりビールだ。きんきんに冷えたビールを渇いたノドに注ぎ込む。モツの煮込みが絶品。終わりよければ全て良し。本日の八王子城攻め、悪戦苦闘を振り返りながらゆったりとまどろんだ。

(完)
【記事】2012-08-31 まんが王散策人
  • 地図
  • 頂上
  • 頂上の景色
  • 金子丸
  • 福善寺観音堂
  • 福善寺観音堂の表札
  • 道に観音様
  • 木漏れ日の観音様
  • 角に観音様
  • 砂利の坂道
  • 渡り橋
  • 広間のような
  • 大手の門跡
  • 古道案内板
  • コラム曳橋
  • 曳橋を渡る
  • 曳橋1
  • 橋台石垣と曳橋
  • 石垣
  • 石垣階段
  • 御主殿虎口案内
  • 石垣2
  • 櫓門看板
  • 御主殿に入る門
  • 御主殿跡
  • 御主殿跡案内
  • 御主殿の滝案内
  • 滝
  • 曳橋下から
  • ガイダンス施設
  • 鬼の像
  • 休憩所の入り口
  • 庭ガーデンcafeうまし郷
  • ビール

【お店の紹介】庭cafe 美し郷(うましさと)八王子市元八王子町3-2638-1
【営業日】土・日曜、祝日、連休中【営業時間】4~10月10:00~18:00 11~3月10:30~16:00
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